花色えんぴつ

30代、独女

今週のお題「家で飲む」


半年前までは、ひとりでバーでカクテルを飲むのが週に一度の至福のひとときであった。

何年かそういう生活を続け、あらゆるお酒とカクテルを楽しんだと思う。


だが、半年前に知人の不幸があり、いっそのこと

この楽しみもやめてしまおう、と決めた。当時、大切な知人と同じくらい、バーのカクテルが好きだったからだと思う。

それから全く、そのショットバーどころか別のバーにも行かない。


今住んでいる部屋は4階建ての4階の部屋である。賃貸にしては少しベランダが広い。

このベランダで、万能台に腰掛け

足を伸ばして、夕焼けを仰ぎながら、缶チューハイや赤ワインを飲むのが、今の私の至福のひとときだ。

風に当たりながら、街の喧騒を見下ろして、遠くの夕焼けを見つめながら少しだけ。

普通の賃貸マンションの一室で、こんなに贅沢な気持ちになれるのは、私にとっては大きな幸せである。


なぜ、彼は自ら命を、

そう思いながら、亡くなってしまった知人を夕焼けに思い出す。

ショットバーのカクテルが懐かしいが、戻りたいとは思わないのは、失ったものを大切にしている

そんな気持ちの裏返しである。


彼の死は、これからも私の

永遠の七不思議だ。

心の癒えぬ傷跡も、ベランダの赤ワインで綺麗に彩られるようだった。